財務管理の基礎知識

執筆担当

中嶋 徹(Toru Nakajima) 

中小企業診断士、ITコーディネータ、インキュベーション・マネージャ

 

プロフィール

1961年生まれ 青梅市出身
大学卒業後、地域金融機関を経て商工会議所勤務、現在はおうめ創業支援センター常勤。趣味はゴルフと家庭菜園。

 


第2回 創業者の実態と対策

前回は、経営者が本来考えるべきことと実態のギャップなどについて触れました。今回は、開業して1年経った人たちのアンケート調査から、売上と支出の予想や実態について考え、その傾向と対策についてです。起業した先輩たちの苦労や経験から、学ぶべきことはたくさんあります。
アンケートはすべて日本政策金融公庫総合研究所の「新規創業パネル調査結果(複数回答・%)」より

 


<今回のテーマ>
1.売上予想とのギャップ
開業時の売上予想は難しい?
2.支出予想とのギャップ
予想以上にある支出(出費)と開業前に知らなかった支出
3.安定経営のために
安定した経営をするために今から準備しておくこととは何か

 


1.売上予想とのギャップ

「思ったより客単価が低かった」など相対的に予想よりも下振れしています。多くの創業者が、当初の予想よりも売上が少なく、苦しんでいるようです。このように、事前に正確に売上を予測することは難しいのが実態です。

2.支出予想とのギャップ

最も多い回答が「開業前には知らなかった支出が多かった」です。具体的には、税金や社会保険の雇用主負担分など、これまで出会うことのなかった支出のようです。事業をしてみて始めて分かることも多いのが実態です。

3.安定経営のために

このアンケート結果から読み取れることは、売上というものは、不安定であり下振れすることが多く、予測は難しいということ。

支出は予定外の出費も多く、思ったよりも膨らむということ。


だからと言って、事前の計画や売上予測はしなくていいというものではなく、しっかりと事業計画の中で考えるべきものです。

 

とくに、支出については、「知らなかった」からと言って免除されたり、許されるものではありません。事前の予測から大きく外れて、資金繰りが苦しくならないよう、次のことをしっかりと肝に銘じましょう。

いざというときのために使える手持ちの資金(運転資金とか内部留保金などとも言う)を多めに用意してから起業すること。起業してからこうしたお金を貯めていくのではなく、始める前に十分な手持ちのお金を確保しおくことが、永く経営するコツです。


短期間で経営が行き詰る原因の多くが、この手持ちの資金を十分に確保しないうちに起業してしまったということです。お金に関しては、十分な資金がないままに見切り発車で起業しないこと、これが重要です。

 


第1回 お金と経営

経営とお金は切っても切り離せない関係です。なぜなら、お金は会社の血液であり、事業を継続する上では必要不可欠なもの。お金が血液のように循環しなくなったとたん、事業はそこでSTOP!ということになります。

起業家だけではなく、何年、何十年も経営している人でさえも悩ましい課題が「お金」なのです。

 


<今回のテーマ>
1.投資と支払
お金の使い道としての「投資」と「支払」の違い、お金の使い道の理想形
2.経営者が本来考えるべきこと
お金のこと以外で経営者は何を考えなければいけないのか
3.創業者の実態
開業時に苦労したことや現在苦労していることの実態


1.投資と支払

「経営者が考えていることの7割は、お金に関すること」このように言われたりもしています。

「えっ、本当?」
と思われる方も多いでしょうが、実際のところまったくのでたらめではなさそうです。

 

 

たとえば・・・
・何に投資しようか
・次はどんな商品を開発しようか
・従業員を採用、増やそう
・もっと広告宣伝をしていこう


このような考えのもとで会社のお金を使うことがあります。これらは「投資」であり、将来のリターンを期待して事前にお金を使う前向きな事業活動です。

2.経営者が本来考えるべきこと

経営者として本来考えるべきことは、「支払・返済」といった負債に対する対処法ではなく、会社の「将来像・方向性」といった未来に対するあるべき姿を描くことです。

 

 

会社の「将来像・方向性」とは
・経営理念
・経営目標・ビジョン
・ビジネスモデル
・将来像
・事業コンセプト

などです。

 

これらは経営者の仕事であり、避けて通ることはできません。

 

3.創業者の実態

日本政策金融公庫のアンケート調査によると、開業するときに苦労したこととして「資金繰り・資金調達」を挙げた人が一番多く、開業後1年経過しても販路開拓に次いで苦労している結果となっています。


この結果からもわかるように、お金と経営は関係性が深く、常に経営者を悩ます課題になる可能性が高いものです。

 

経営者になったら、「支払・返済」に追われることなく、会社の将来像や方向性を踏まえた「投資」を考えることに時間を掛けていきましょう。


そのためには、事前の準備として、自己資金を多く持つこと、事業計画を立てた上で行動することが重要です。


一方・・・
・今月の支払をどうしようか
・あれを買いたいけど資金がない
・借りているお金を返さねば


こうした考えのもとでお金をやりくりするのは「支払・返済」ということになります。経営者として、前者の「投資」として考える時間は大いに持つべきですが、実際のところ後者の「支払・返済」に費やされる時間が多いようです。