人事・労務の基礎知識

執筆担当

酒井 恒(Hisashi Sakai)

中小企業診断士

 

プロフィール

1971年生まれ 福岡県北九州市出身
大学卒業後、印刷紙器業、人材広告業、経営コンサルタント業などを経験。前職では、安全衛生関連講習の講師を全国各地で年間100日以上こなす。おうめ創業支援センターでは金曜日に相談員を担当している。



第11回 社会保険とは

前回のお話で「各種保険完備」とは雇用保険、労災保険、健康保険、厚生年金保険に加入していることをいい、「各種保険完備」の会社に勤めている従業員にはそれらの制度が適用されますよ、ということを確認しました。

その中でも雇用保険と労災保険について、詳しく見ていきました。今回は健康保険と厚生年金保険を総称した社会保険を確認したいと思います。

<今回のテーマ>

1.健康保険について

健康保険の仕組みについて解説します
2.厚生年金保険について

厚生年金保険の仕組みについて解説します


1.健康保険について

健康保険は、労働者が仕事中や通勤中以外の病気やけがをした場合に病院に行き、帰りに支払いをする診察代の7割が保険給付として控除されます。それ以外にも、女性労働者が子供を産む前6週間、産んだ後8週間に休みをもらえることが出来るのですが、その休んだ間に給与の代わりがこの健康保険から支払われます。

 

また、傷病手当金という保険給付は、例えば労働者が仕事以外でどこかに遊びに行った時に、大けがをしてしまったとします。仕事中であれば、労働災害ということで先週確認しました労災から療養費や給与の代わりになるものが支払われるのですが、プライベートな怪我については支払われません。そのような場合に、療養の給付や給与の代わりをしてくれる制度なのです。

 

2.厚生年金保険について

厚生年金保険にも様々な保険給付があります。なかでもメインは老後の給与の代わりの老齢厚生年金です。

 

厚生年金保険の保険給付は、老後の給与の代わりになる老齢厚生年金、障害が残ったときに受け取ることが出来る障害厚生年金、本人が死亡した時に家族に支給される遺族厚生年金があります。事業を開始して、下記の条件に該当する場合は、社会保険に加入する義務があります。
1.法人会社
2. 従業員が5人以上の個人事業所(一部の業種除く)

 

この社会保険の保険料負担は使用者と労働者の折半負担になっております。この費用負担は相当なものになりますが、加入義務ですので万が一加入していなければ罰則もあります。ただ、この社会保険にしっかり加入する事で、優秀な人材が確保出来たり、社会的な信用が高まったりといったメリットも多くあります。

    (公共工事労務費調査平成28年10月調査)



第10回 労働保険とは

みなさんは求人情報を見ているときに、「各種保険完備」と書かれているのを見たことがあると思います。「各種保険完備」とは、会社が雇用保険、労災保険、健康保険、厚生年金保険に加入しており、その会社で働く従業員にはそれらの制度が適用されますよ、ということを示しています。これらは、病気や怪我をしたとき、出産をしたとき、失業したとき、高齢になったときなど、働けなくなってしまうような様々な場面で必要な給付を受けられるようにして、労働者の生活を守ることを目的とした制度です。今回は雇用保険と労災保険を総称した労働保険を確認したいと思います。

<今回のテーマ>

1.雇用保険について

雇用保険の仕組みについて解説します
2.労災保険について

労災保険の仕組みについて解説します


1.雇用保険について

雇用保険は、労働者が失業した場合に、生活の安定と就職の促進のための失業等給付を行う保険制度です。

 

勤め先の事業所規模にかかわらず、①1週間の所定労働時間が20時間以上で②31日以上の雇用見込がある人は派遣社員、契約社員、パートタイム労働者やアルバイトも含めて適用対象となります。

 

雇用保険制度への加入は会社の責務であり、自分が加入の必要があるかどうか、ハローワークに問い合わせることも可能です。大まかに言うと保険料は労働者と会社の双方が負担します。


失業してしまった場合には、基本手当の支給を受けることができます。(額は、在職時の給与などによって決定されます)。雇用保険に関する各種受付はハロ
ーワークで行っています。雇用保険は、失業等給付以外にも、就職促進給付、教育訓練給付、高年齢雇用継続給付、育児・介護休業給付など様々な給付があります。

2.労災保険について

労災保険の正式名称は、労働者災害補償保険といい、仕事中や通勤中の事故による補償になります。

労災保険は、労働者の業務が原因の怪我、病気、死亡(業務災害)、また通勤の途中の事故などの場合(通勤災害)に、国が会社に代わって給付を行う公的な制度です。


労働基準法では、労働者が仕事で病気やけがをしたときには、会社が療養費を負担し、その病気やけがのため労働者が働けないときは、休業補償を支払うことを義務づけています。しかし、会社に余裕がなかったり、大きな事故が起きたりした場合には、十分な補償ができないかもしれません。そこで、労働災害が起きたときに労働者が確実な補償を得られるように労災保険制度が設けられています。


基本的に労働者を一人でも雇用する会社は適用され、保険料は全額会社が負担します。労働災害に対する給付は、パートタイム労働者やアルバイトも含むすべての労働者が対象であり、仮に会社が加入手続きをしていない場合でも、給付を受けられます。各種受付は労働基準監督署で行っています。 



第9回 男女雇用機会均等法とは(その2)

前回は男女雇用機会均等法の概要とポジティブアクションについて、確認しました。今回はセクシャルハラスメント(以下:セクハラ)、パワーハラスメント(以下:パワハラ)について、確認したいと思います。どちらのハラスメントも企業にとってあってはならないことで、こじれてしまうと多大な損害を企業に与えてしまいます。

<今回のテーマ>

1.セクハラについて

2種類のセクハラについて解説します
2.パワハラについて

6つのパワハラについて解説します


1.セクハラついて

職場におけるセクシャルハラスメントとは、「職場」において行われる「労働者」の意に反する「性的な言動」に対する労働者の対応により、当該労働者がその労働条件につき不利益を受けたり、就業環境が害されることをいいます。

セクハラには、①対価型セクシャルハラスメント、②環境型セクシャルハラスメントの2種類があります。

①対価型セクシャルハラスメントとは、職場において行われる労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応により、労働者が解雇、降格、減給等の不利益を受けるものを言います。

 

具体的な例として、事務所内において事業主が労働者に対して性的な関係を要求したが、拒否されたため、その労働者を解雇することなどがあります。


②環境型セクシャルハラスメントとは、職場において行われる労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じるものをいいます。

 

具体的な例として、事務所内において上司が労働者の腰、胸等に度々触ったため、その労働者が苦痛に感じてその就業意欲が低下していることなどがあります。

男女雇用機会均等法は、職場のセクシュアルハラスメント防止のために、セクハラの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備等雇用管理上必要な措置を講じることを事業主に義務付けています

2.パワハラについて

職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいいます。

 

パワハラが会社内で発生することで、様々な悪影響を及ぼします。具体的には、職場雰囲気の悪化、メンタルヘルス面の悪化、生産性の低下、人材の流出、企業イメージの悪化など周りにも影響を与えます。


特にパワハラによってメンタル不調を患い、自殺に至るケースもあります。そのようなことが起こると、人道的にも批判されるでしょうし、労働者に対する安全配慮義務違反から裁判に至り、多額の損害賠償を請求されることにもつながります。


パワハラには大きく分けて以下の6つがあります。
①暴行・傷害(身体的な攻撃)
②脅迫・名誉毀損・侮辱・暴言(精神的な攻撃)
③隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)
④不要なことや不可能なことの強制、仕事の妨害(過
大な要求)
⑤合理性なく、程度の低い仕事を命じる、仕事を与え
ないこ(過小な要求)
⑥私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)



第8回 男女雇用機会均等法とは

今回は男女雇用機会均等法について、確認したいと思います。男女雇用機会均等法とは、一言でいうと性別による差別は一切ダメという法律です。

 

<今回のテーマ>

1.男女雇用機会均等法について
2.ポジティブアクションについて

 


1.男女雇用機会均等法について

男性と女性がともにいきいきと働きつづけることができるように、性別による差別をなくすために法律上さまざまな制度が設けられています。


現在の日本において、性別による差別は一切禁止です。会社は、労働者の募集・採用について性別に関係なく均等な機会を与えなければならないとされています。(男女雇用機会均等法第 5 条)

 

ですので、人材を募集する際、下記のような表記は禁止されています。

【禁止表現】     【訂正表現】
看護婦募集      看護師
保母募集         保育士
セールスマン募集         営業社員
ガードマン募集      警備員
カメラマン募集            カメラマン(男女)
 
採用について、「男性のみ募集、女性のみ募集」のような表現も直接差別につながり禁止されています。
また、業務上男性でも女性でもつける業務に対して、「身長170㎝、体重70kgの方募集」というのは間接差別で禁止されています。

 

会社は、配置、昇進、降格、教育訓練、福利厚生、職種・雇用形態の変更、退職の勧奨、定年、解雇、労働契約の更新において、労働者の性別を理由として差別的な取扱いをしてはいけません。(男女雇用機会均等法第 6 条)


配置については、「営業部門において、男性労働者には外勤業務に従事させるが、女性労働者についてはその業務から排除し、内勤業務のみに従事させる」という表現は禁止されています。


福利厚生については、「男性労働者についてのみ、社宅を貸与する」という表現も当然に禁止されている。
また、法律は異なるが、労働者が女性であることを理由として、賃金について男性と差別的取扱いをすることも禁止されています。(労働基準法第 4 条)

 

以上のように、ありとあらゆる場面で性別による差別は許されません。

2.ポジティブアクションについて

男性、女性といった性別による差別は、日本国内において一切許されていないのですが、男性中心による偏りをなくすために例外として女性を優遇するポジティブアクションと呼ばれるものがあります

 

 

ポジティブ・アクションとは、固定的な男女の役割分担意識や過去の経緯から、営業職に女性はほとんどいない、課長以上の管理職は男性が大半を占めている等の差が男女労働者の間に生じている場合、このような差を解消しようと、個々の企業が行う自主的かつ積極的な取組をいいます。


社内制度には男女差別的取扱いはないのに「女性の職域が広がらない」「なかなか女性の管理職が増えない」 そのために女性の能力が十分に活かされていないといった場合に、このような課題を解決し、実質的な男女均等取扱いを 実現するために必要となるものです。

 

例えば、労働者の雇用に関する状況を分析した結果、勤続年数が長い女性労働者が多数勤務しているにもかかわらず、 管理職になっている女性が男性と比べて極めて少数であるというような場合、「3年間で女性管理職20%増加」という目標を掲げ、女性の管理職候補者を対象とする研修の実施、女性に対する昇進・昇格試験受験の奨励、昇進・昇格基準の明確化等の取組を行っていくことが考えられます。



第7回 労働安全衛生法とは

前回の講義では、労働安全衛生法(前半)について、確認しました。今回は労働安全衛生法(後半)について、確認していきたいと思います。

 

<今回のテーマ>

1.これからの時期に気を付けたい熱中症について
2.メンタルヘルスについて


1.熱中症について

 

これからの季節において、注意すべき労働災害として、熱中症があげられます。

過去 10 年間(平成 19~28 年)の職場での熱中症による死亡者数、及び4日以上休業した業務上疾病者の数(以下、合わせて「死傷者数」という。)をみると、平成 22 年に 656 人と最多であり、その後も 400~500 人台で推移しています。

 

 

熱中症を予防するためには、対策が必要です。職場での熱中症を防止するために、以下の内容をこころがけましょう。

 

1.暑さに負けない体づくり
・「水分を」こまめにとろう
・「塩分を」ほどよく取ろう
・「睡眠環境を」快適に保とう
・「丈夫な体を」つくろう

 

2.暑さに対する工夫
・「気温と湿度を」いつも気にしよう
・「室内を」涼しくしよう
・「衣服を」工夫しよう
・「日ざしを」よけよう
・「冷却グッズを」身につけよう

 

3.暑さから身を守るアクション
・「飲み物を」持ち歩こう
・「休憩を」こまめにとろう

2.メンタルヘルスについて

現代はストレス社会ともいわれ、メンタル不調になる人が多くいます。小規模事業者が取り組むべきメンタルヘルス対策について確認したいと思います。

 

 

小規模事業のであっても事業者は、事業場におけるメンタルヘルスケアを積極的に推進し、衛生委員会等において十分調査審議を行い、「心の健康づくり計画」を策定するとともに、その実施に当たっては、関係者に対する教育研修・情報提供を行う。

 

そして、「4つのケア」を効果的に推進し、職場環境等の改善、メンタルヘルス不調への対応、職場復帰のための支援が円滑に行われるようにする必要があります。

 

また、事業者は、心の健康問題の内容、個人の健康情報の保護への配慮、人事労務管理との連携、家庭・個人生活等の職場以外の問題等との関係に留意しなければなりません。


次の点に注意が必要です。

・心の健康問題の特性・・・評価が容易ではなく個人差がある。

・労働者個人情報の保護の配慮・・・個人情報の保護、意思の尊重に留意する。
・人事労務管理との連携・・・人事労務管理と連携する。
・家庭・個人生活等の職場以外の問題・・・家庭や個人生活等にも影響を受けていることも多い。

 

上記の内容に注意しつつも一番大切なことは、綿密にコミュニケーションをとることです。コミュニケーションがとれていれば、ちょっとした異変に気付きますし、相談もしやすいものです。


 コミュニケーションを密にすることで、このようなメンタル不調を見抜くだけでなく、意思の疎通が活発化されミスを防ぐだけでなく、ヒット商品の開発につながったりもします。また、コストの低減につながったりと多くのメリットを生み出します。