経理と会計の基礎知識

執筆担当

中嶋 徹(Toru Nakajima) 

中小企業診断士、ITコーディネータ、インキュベーション・マネージャ

 

プロフィール

1961年生まれ 青梅市出身
大学卒業後、地域金融機関を経て商工会議所勤務、現在はおうめ創業支援センター常勤。趣味はゴルフと家庭菜園。

 



第2回 起業前から準備すること

経理と会計は、基本的には起業してからの作業ですが、起業してから慌てないためにも、起業する前から準備できるものはしっかりとしておきましょう。

<今回のテーマ>
1.日商簿記3級程度の知識を習得
知識がないと混乱するもの
2.実務で必要なフォーマットに慣れる
事前に慣れておく


1.日商簿記3級程度の知識を習得

一つの目安として、日商簿記3級程度の知識を持ち合わせてください。検定試験に合格しろということではありません。あくまでも準じた知識を持ってくださいということです。理由は、その程度の知識がないと混乱したり、ミスを見逃す恐れが高いからです。具体的には、次の3つは知識がない人が混乱する代表的なものです。

①減価償却
②貸借対照表
③発生主義

 

①減価償却
例えば、現金100万円で営業量の車両を買った場合、車両は経費ですが100万円全てを買った年に経費に計上できません。法廷耐用年数に準じた減価償却計算で数年に分けて経費に計上していく決まりになっています。

 

②貸借対照表
決算時に会計ソフトから貸借対照表を印刷して、期末現金がマイナスになっていた・・・。これは普通ではあり得ませんが、知識がなければ「おかしい」と思わずに見逃してしまいます。

 

③発生主義
現金が動く日ではなく、収支の事実が確定した時点で会計処理をすることですが、会計の原則はこの発生主義で処理をします。

たとえば、「11/18に消耗品1,000円をクレジットカードで購入しました。カードの決済日(引落し)は12/25です」となった場合、

 

11/18 消耗品を購入(未払金)
12/25 普通預金から未払金を決済


と面倒ですが2回に分けて会計処理をします。

上記のことをすんなりと理解するには、日商簿記3級程度の知識が必要です。もしも何を言っているのか意味不明な場合は、今から勉強してください。

2.実務で必要なフォーマットに慣れる

実際に事業を始めると、見積書、発注書、納品書、請求書、領収書などをもらったり、または自分で発行したりする機会があります。

 

その場で慌てないためにも、今からフォーマットなどを準備して、書き方も練習しておきましょう。

 

なお、フォーマットはインターネットから無料でダウンロードできますので、自分に合ったものを見つけてください。

中でも代表的な領収書について説明します。
領収書として必要な項目は以下の通りです。

①日付
発行した日付を入れます

②宛名
誰宛のものなのか明記します
③金額
④但し書き
⑤印紙
5万円以上であれば金額に応じた印紙を貼ります
⑥発行者住所氏名・印

 

正しい書き方をして相手に渡すのはビジネスのルールですので、領収書に限らず早めに慣れておきましょう。



第1回 簿記の知識と経営

創業者へのアンケートによると、開業前・開業時・開業後1年経過したすべての時点で、「不足していると感じる知識や能力は何ですか?」という問に、経理・会計税金の知識と回答した人は、顧客開拓や人事労務、人脈、ITよりもダントツで多いのです(日本政策金融公庫の調査結果より)。このように、不足している知識を事前に補い、起業してから慌てないためにも、経理と会計の知識を習得しましょう。

<今回のテーマ>

1.簿記の知識とは
簿記とは何でしょうか
どこまで必要でしょうか
2.経理をすることの意味
なぜ経理処理が重要なのでしょうか


1.簿記の知識とは

「簿記」とは何でしょうか?
イメージとしては、面倒で取っ付きにくい感じがしますが、言葉で表せばこうなります。

事業活動によって動いた「お金」や「商品」の流れを帳簿に記録していくこと。

 

別に難しいことをするのではありません。

何となく儲かっている
何となく損をしている

ではなく、感覚的な「何となく」の部分を誰でも共通に理解できるように「数値化」する作業のことです。

 

 

では、会社を経営する上で、募金知識はどこまで必要でしょうか?

会計ソフトを使えば、それほど必要ではありませんが、やはり最低限の知識は必要です。

 

なぜならば、事業活動を「お金」から正確に記録し、把握することが、経営にとって重要です。そして、正確に記録する作業に「簿記」の知識が必要となるのです。

2.経理をすることの意味

経理(をすることの)の意味は4つあります。
①正しい税金の計算
②損益状況を把握
③お金(資金)の過不足を把握
④財務状況からやるべきことを判断
この4つを正確かつ迅速に記録する必要があるのです。

 

①正しい税金の計算をする
個人事業主は1年間に発生した売上、経費などを計算して税務署に書類を提出します。これは自己申告ですので、正しい計算をしなければ、あとで面倒な手続きや余分な納税も発生する恐れがあります。

 

②損益状況を把握

「儲かっているハズなのに手元にお金がない」このように嘆く経営者は、会社の損益状況が正確に把握できていないからです。日々経理処理をしていれば、正確な損益状況が把握できます。

 

③お金(資金)の過不足を把握
一般的に季節変動や流行などの影響で、売上は一定ではありません。手元にお金がなくなってから慌てて資金手当てを考えるのではなく、早めにお金の過不足を把握する必要があります。

 

④財務状況からやるべきことを判断
手元にお金が無くなる前に資金を調達することもそうですが、逆に利益が多く手元に必要以上にお金がある場合、それをどう使うのかは経営者にとって重要な判断です。将来の投資のために留保しておく、新たな設備投資をする、借入金の早期返済に回すなど、財務状況を把握することによって、将来のために今何をすべきかを考える材料として経理処理をするのです。