必ず必要な販路開拓

執筆担当

杉野 喜久(Yoshihisa Sugino)

インキュベーション・マネージャー

 

プロフィール

1956年生まれ 山口県下関市出身

長年、繊維関係の業界に従事し、営業・商品企画・生産管理・販売管理・発注仕入管理・総務・経理等の職務を経験。平成22年独立、経営コンサルタントとして、経営改善、創業支援、事業承継等に携わる。



第6回 営業力を身に着ける方法 3

営業力を身に着けるためには、どんな意識で、どんな環境で、どんな営業の仕事をすれば、営業力を身に付けられるかを説明します。

<今回のテーマ>

1.意識
営業の仕事を少しかじった程度では意味がありません。その働く環境で最低でも、5指に入れるくらいの結果を残すことが重要です。
2.環境
営業力を身に着けるには、環境を変えることがとても重要になってきます。

 


1.意識

営業力のある人、無い人を判断するのは、結果しかありません。結果を出すことで、自信が産まれます。できる(成功する)という考えを産むのです。

 

できるという発想を持っている人は、上手くやるためにどうするのか、ということを建設的に考える傾向があり、できないという考えが先にある人は、できない理由(言い訳、自己弁護)を探し始めるのです。起業家には根拠のない自信が大切だと言われるのはこういう理由からです。

 

起業家を目指し、営業力をつけたいと思っている人は、「何があっても結果を出す」という覚悟と決断が必要です。


覚悟とは、どんな辛いことがあっても乗り越えてやるという思いです。決断とは、営業の仕事をやる上で断つものを決めることです。それは、家族や彼女との時間かもしれません。友人との楽しい飲み会かもしれません。何にせよ、営業の仕事に本気で向きあうため、どれだけの犠牲を払うかを決めることです。

 

2.環境

意識が変われば考えが変わる。考えが変われば行動が変わる。行動が変われば環境が変わる。環境が変われば人生が変わる。

こんな言葉を聞いたことありませんか?

 

自分を取り巻く環境というのは非常に大切です。どんな環境に身を置くか、というのはどんな人が周りにいて、あなたにどんな影響を及ぼすのかということです。つまりあなたの成長に密接に関係するのです。効率よく敏腕営業マンになるための良い環境をまとめました。


1.直属の上司が凄腕営業マンである。
最初は上司や先輩から営業を学ぶ訳です。”学ぶ”の語源は”真似る”です。
2.同期のライバルがいる
営業で成果を出し続けるためには、モチベーションが必要不可欠です。張り合える仲間がいるということは、大きな効果があると言えます。
3.会社(組織)が若い
古い会社では、業務が安定して勢いが無くなり、ルーティン化されます。反対に、創立間もないベンチャー企業などは、勢いがあります。

 



第5回 営業力を身に着ける方法 2

営業力のある人の共通点として、前回からの特徴のヒアリング力と自然体であることに加え、共感することが出来る事と行動力がある事が挙げられます。

<今回のテーマ>

1.感情表現が豊かである
傾聴でいう共感を表現することに長けており、相手に親近感を抱かせることが出来ます。
2.行動力がある(業務遂行能力がある)
業務を遂行して、結果を出す能力に長けています。

 


1.感情表現が豊かである

営業力のある人は、自分が考えていることをそのまま表現できる力を持っています。

 

顧客の話に感動したら「なるほど!それはすごいですね!」と声、表情、身振り手振りをすべて使って表現します。心の中で「すごい!」と思っても、その気持ちが客観的に見て分からなかったら、営業マンとしては、大変残念な状態です。ぜひ、オーバーリアクションを意識して欲しいと思います。

 

感情表現は、日頃から目的をもって、意識して訓練することで身についていきます。ぜひ、トライしてみて下さい。


本を読んだり、ブログを見たりしていても、営業に関する知識は増えていきますが、決して営業力は身につきません。営業力は、高い目的意識と良い環境の中にあって、常に訓練することで効率よくレベルアップできます。

2.行動力がある(業務遂行能力がある)

営業力のある人は、行動して結果を出すことが出来る力を持っています。別の言い方をすると業務遂行能力があるとも言います。

 

そしてそれを繰り返し行えます。繰り返し行動し、結果を出している内に、どんどんと次のステップに進めるようになります。考えることも大切ですが、行動することが一番重要なのです。

 

 

営業力を身につけるということですが、営業力が身に付いたと思う基準はなんでしょうか?すこし営業の仕事をかじった程度では意味がありません。その働く環境で最低でも、5指に入れるくらいの結果を残すことが重要です。


営業力のある人、無い人を判断するのは、結果しかないのです。結果を出すことで、自信が産まれます。そして、私はあの環境で良い営業成績を残したという事実が、起業してもできるという考えを産むのです。



第4回 営業力を身に着ける方法 1

営業力のある人は考え方や行動に共通点があります。
今回から6回(個人編3回、組織編3回)に分けて、具体的に分析していきます。


<今回のテーマ>
1.ヒアリング力(傾聴)
営業力を身に着けるには、コミュニケーション力を高めることが重要で、そのためには傾聴できることが必須です。
2.自然体であること

相手との距離を縮めるには、自分のパーソナルスペースを小さくすることが重要です。


1.ヒアリング力(傾聴)

 

ヒアリング力が優れているということは、傾聴がしっかり出来ているということです。

 

傾聴とは、耳を傾けて、熱心に聞くことです。

もともとカウンセリングにおけるコミュニケーション技能の1つである受容と非常に似ており、傾聴の目的は相手を理解し共感することにあります。


傾聴で大切なのは次の3つとされます。


・言葉以外の行動に注意を向け、理解します。
(姿勢、しぐさ、表情、声の調子など)
・言葉によるメッセージに最後まで耳を傾け、理解します。
・言葉の背後にある感情も受け止め、共感を示します。

 

営業力のある人は、相手が何を望んでいるか、何に困っているかをしっかり聞き出すことができています。このヒアリング自体も技術がいるため簡単ではないのですが、ヒアリング重視の商談を意識するだけで、ずいぶんと営業力が向上します。

2.自然体であること

自然体であるということは、ジョハリの窓のAの部分が大きいということです。

ジョハリの窓とは、コミュニケーション心理学として使われる言葉で、「対人関係における気づきのグラフモデル」です。

 

上部に紹介した画像のように自分の姿は4つの窓に分類されます。この窓をカメラのフレームとイメージするとわかりやすいと思います。

 

開放の窓(Aの自分にも、他人にも分かっている部分)
ここは自分が考えている姿と、他人に 見えている姿が
一致している状態を示します。ジョハリの窓で、客観的に見た自分を知ることで、これまで気づけなかった深い自己理解ができます。

 

ビジネスだからと言って、顧客だからと言って、極端に丁寧になり過ぎない。ごくごく自然体で顧客と接することが大切です。


相手に対してオープンな自分でいることが、顧客との心理的な距離を縮めることに役立つのです。顧客と親しくなるには、くだけた部分も必要なのではないかと感じます。

 



第3回 営業力を高めるためには

営業力を構成する能力のうち、営業力を高めるために効果的な、スキル(技術・技能)、業務遂行能力の2つの能力について、具体的に説明します。

<今回のテーマ>
1.スキル(技術・技能)とは
営業活動の効率向上や顧客満足度を高めるための技能のことです。
2.業務遂行能力とは
やるべき業務を体系的に整理し、自ら積極的に行動する能力のことです。

 


1.スキル(技術・技能)とは

 

営業力は、人間力、知識、スキル、業務遂行能力の4つの能力に区分することができるとお話ししました。
今回は、スキルと業務遂行能力の説明です。

 

どんなに優れた知識があったとしても、それをわかりやすい資料に仕立て上げ、相手に応じた適切な説明ができなければ、仕事の効率は上がりません。心の機微にうまく対応して会話を進めなければ、相手に不愉快な思いをさせたり、怒らせてしまったりするかもしれません。

 

スキルとは、営業活動を効率よく、円滑に進めるために必要となる能力といえるでしょう。具体的には、次のようなことができる能力です。

 

・顧客との交渉を効率よく進める(折衝能力)
・顧客との良好な関係を構築・維持する
・顧客を引きつけ、確実に伝える
・営業活動を円滑に行える能力

 

2.知識を磨く

業務遂行能力とは、営業活動プロセスに沿って遂行する能力とも言われます。
営業活動プロセスとは、案件を発掘し、確実に受注するために行うべき基本動作を時系列に沿って整理した行動リストです。

 

 

営業活動プロセスを確実に遂行し受注を獲得するためには、段階に応じて様々な能力が求められます。

 

・課題から解決策を見つけ出す能力
・案件を具体化し実施・採用の条件を具体化する能力
・顧客と交渉を進め受注を獲得する能力
・受注後のデリバリーを成功させるために後方部隊を
支援する能力

 

ここに記述した能力は、理想的なあるべき姿をイメージしたものです。出来ていないからといって、悲観する必要はありません。むしろ、なにができていて何が出来ていないかを冷静に評価し、営業力向上の糸口を考えてみることが重要です。



第2回 営業力を身に着けるには

営業力は、人間力、知識、スキル、業務遂行能力の4つの能力に区分することができ、それらの総合力が営業力を構成しています。


<今回のテーマ>
1.人間力とは
顧客の「あるべき姿」の実現と、営業目標達成の両立を行う自律的行動力
2.知識を磨く
営業活動を円滑に進めるための知識
社会や顧客、自社や他社、ITや業務についての知識

 


1.人間力とは

2017年の中小企業白書の資料で、高成長型企業が各成長段階で必要とする人材として営業・販売人材が求められています。

前回、営業力は、人間力、知識、スキル、業務遂行能力の4つの能力に区分することができ、その中でも特に重要なのが人間力だとお話ししました。

 

人間力とは、顧客の言われるままに何かをすることではなく、顧客の課題が何か、あるいはニーズが何かを理解し、真に顧客の幸せは何かを考えることの出来る能力。

 

具体的には、次のようなことができる能力です。

 

・顧客に好かれる
・目標達成に強い意欲を持つ
・目標意識を持って積極的に行動する
・自分の役割を認識して責任を持って行動する
・進捗段階に応じた業務が遂行でき、進捗や結果を把
 握し報告が出来る
・顧客/同僚との信頼関係を構築・維持できる

 

 

2.知識を磨く

顧客に相談され、頼られるようになることは、営業活動を円滑に進める上で、是非とも必要なことです。それには、「知識」がなくてはなりません。

 

顧客の聞きたいことに応えられることも大切ですが、顧客が何を考え、何を必要としているかを推し量り、顧客が知りたいことを先んじて提供することや、顧客の話を聞いて、それを整理整頓し、どこに課題があり、何を必要としているのかを探り出せなくてはなりません。

 

自社の商品やサービスの知識だけでは不十分です。自分の関わるビジネス領域について広い知識、経営や業務、社会についての知識、自分が関わる専門領域についての深い知識が必要です。

 

具体的には、次のようなことができる能力です。

 

・顧客との会話を深める
・戦略立案や提案策定の基盤とする
・取引上の契約や手続きを円滑に進める
  



第1回 創業で苦労することは?

東京商工会議所が発表した「創業の実態に関する調査報告書」のデータから抽出した、創業で苦労した「販路開拓」について解説します。


<今回のテーマ>
1.販路開拓の難しさ
アンケート調査から見えてくるものがあります
販路開拓に必要なものとは何でしょうか?
2.営業力を分解する
黒字にするためには時間がかかります
営業力を身に着けるために必要なスキルとは何でしょうか?

 


1.販路開拓の難しさ

東京商工会議所が発表した「創業の実態に関する調査報告書」のデータをご紹介します。この調査は、創業6か月以上5年以内の東証会員企業を対象に実施したアンケート調査です。

 

創業後、2社に1社以上が「資金調達」と「販路開拓」と「人材確保」に苦労した(苦労している)と回答しています。「資金」と「販路」と「人材確保」が創業後の課題だというのは全体に共通しています。

 

売上を伸ばし、販路を開拓するためには何が必要なのでしょうか?それは営業力です。


業種によって違いますが、販売業を例に取ると、製品が良ければ売れるという時代は終わりました。製品が良いということは大前提で、それをきちんと顧客に訴求しなければならないということなのです。


この「製品をきちんと顧客に訴求する」ことが、営業の役割と言えるでしょう。ラッキーではなく、自分の力で、どのような状況にあっても、営業目標を継続して達成し続ける能力です。


営業の仕事は、顧客価値の実現と引き替えに、売上や利益を獲得することです。また、同時に「顧客満足」の提供と引き替えに、顧客の信頼を獲得し、良好な関係を維持することでもあります。このようなことができる能力を営業力と言います。

 

2.営業力を分解する

業歴別でいえば、1年目は65%近くの企業が赤字ですが、2年目になると赤字企業の割合はほぼ半減し、3年目以降になると黒字の割合が多くなります。
これは、起業家の営業努力の結果です。起業家が営業力を身に着け、顧客を開拓し、売り上げを上げたから達成できた成果です。

 

 

では、どうしたら営業スキルを習得できるのでしょうか?営業力は、なにかひとつの能力に秀でているからといって実現できるものではありません。いろいろな能力の総合力です。例えば、プレゼンテーションがうまくできるから、継続的に売上目標を達成できるというものではありません。


営業力は、人間力、知識、スキル、業務遂行能力の4つの能力に区分することができ、それらの総合力が営業力を構成しています。


その中で、最も重要なスキルが人間力だと言われています。人間力は、誰かにやらされるのではなく、自らの意志で、目標を達成することを楽しめる力と言い換えることもできるでしょう。また、人との係わりを楽しみ、人に好感を持たれることも必要です。


ヒューマンスキルとも言われますが、このような能力は、営業固有のものではなく、広く社会人として求められる能力といってもいいでしょう。この能力を土台として、営業固有の能力を築く必要があります。